稲村堂作業日誌

科学雑誌を読む日々。

科学雑誌を読む

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いつものコーヒーショップで、昨日届いたばかりの『ネイチャー』 9/11号をパラパラとめくる。テナガザルのゲノムつまり全てのDNAの配列が解読されたという報告を読む。表紙のサルがキタホオジロテナガザル(の赤ちゃん)。解説記事もある(p.174)。さっそく読んでみる。

 で、解読してわかったことの一つとして、テナガザルでは"動く遺伝子"がゲノムの構成に重要な役割を果たしてきたのではないか?ということ。動く遺伝子そのものは、そもそもトウモロコシで見つかったDNA断片。いろんな種類がある。植物だけでなく昆虫(ハエとか)にも、そしてヒトにもある。こいつがゲノム上をぴょこぴょこ動くことで、遺伝情報の原典ともいえるDNAの配列を変えていく(ゲノムを再編成していく)。本のページに書き込まれた文字列がランダムに書き換えられていく、という感じ? 動く遺伝子は"ノイズ"を持ちこむんだな。

 で、進化的な時間を経て(ヒトを含む大型類人猿とテナガザルの系統が分岐したのが1700万万年前とある)、一夫一婦制でしっぽのない(!知らなかった)二足歩行できる今のテナガザルに至ったということらしい。

 テナガザルの動く遺伝子そのものの配列は、ヒトの動く遺伝子と似ているけど違うものと書かれている。テナガザルにユニークなもの。まあ長い時間をかけて変化して今の配列に至ったのだろう(これからも変わるかもしれない)。

 今度、動物園に行ったら、歌うように鳴くことでも知られるテナガザルの前で話しかけてみることにする(心のなかで)。君たちの細胞のなかにあるゲノム上の動く遺伝子はやけに動き回るらしいじゃないか。

Nature 513, 174-175 (11 September 2014)