科学書を読む
正確に言えば、科学書ではない。高校生の頃に購入してから折りをみて再読している『寺田寅彦随筆集』(岩波文庫)に飽きたらず、先日は近隣の図書館に赴き、『寺田寅彦全集 第二十巻』(岩波書店1998)を借りてくる。この本には、大正四年から大正八年までの寺田さんの日記が収められている。二段組みのレイアウトで、一日につき多くて十行くらいの簡潔な記述が続く。西暦でいうと1915~1919年にあたる。約100年前の日記文ということになる(あらためて驚く)。
で、以下のような記述にグッとくる。
三越に寄りて絵画展覧会を一見す。丸善にてウエリントンタイプライターを求む。
(大正四年 十一月二十五日の記述)
ちなみに大正4年(1915年)11月25日は木曜日で、寺田さんの住んでいた東京の天気は晴れとのこと。
で、この記述を目にして真っ先に思い浮かぶのは、「丸善と三越」というエッセイ。『寺田寅彦随筆集 第一巻』(岩波文庫)に収められている(p.119)。100年近く前の日本橋かいわいを寺田さんは歩いていたんだなあ、書店をこんなふうにめぐっていたんだなあ、としみじみするエッセイ。青空文庫でも読める(http://www.aozora.gr.jp/cards/000042/card2437.html)。個人的には、エッセイ前半の丸善について述べたくだりが好みです。