稲村堂作業日誌

科学雑誌を読む日々。

『意識をめぐる冒険』のための地図 [005]

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●『意識をめぐる冒険』のための地図 [005]
『意識をめぐる冒険』(岩波書店2014)の第2章で、〈関わっているニューロンの平均スパイク発火率はどれくらいか?〉という表現が出てきます(p.038)。ニューロン(神経細胞)が「発火する」といっても、なにも細胞が「火を噴く」わけではなく、ざっくりと言えば、外部から刺激を受けたニューロンが、別の細胞へ刺激を送ることを「発火」と考えればよいと思います。「活動電位が発生する」とも言い換えられます。

『意識をめぐる冒険』のための地図 [004]

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●『意識をめぐる冒険』のための地図 [004]
『意識をめぐる冒険』(岩波書店2014)の第1章では、〈デービッド・チャルマースの言う「ゾンビ」はなぜ、現実の世界には存在しないのか?〉という文が出てきます(p.010)。この本では後の方(たとえば第3章)でも、「ゾンビ・システム」とか「ゾンビ・エージェント」などという言葉が出てきます。哲学者チャルマースには、意識の研究者にとって重要な書物である『The Conscious Mind』というものがあります。邦訳もあります(『意識する心―脳と精神の根本理論を求めて』、林一 訳、白揚社2001)。そのなかで、「ゾンビ」の定義についてチャルマースは以下のように書いています:

〔ゾンビとは〕物理的に私(意識をもった存在なら何でもいい)と同一でありながら、まるっきり意識体験を欠いている誰か、あるいは何ものかである。(p.128)

『意識をめぐる冒険』のための地図 [003]

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●『意識をめぐる冒険』のための地図 [003]
『意識をめぐる冒険』(岩波書店2014)の第3章では「ミラーテスト」が紹介されています(p.073)。鏡を使う実験なので「ミラー」テストです。動物が「鏡のなかの自分の姿が自分であると認識できるかどうか」を調べるテストです。著者は、ミラーテストに合格する動物として「大型類人猿、イルカ、ゾウ、カササギなど」を挙げています。このうち、カササギ(日本の野鳥でいえばオナガに近い?)を対象としたミラーテストの動画を見つけたので紹介します。イギリスの一般向け科学雑誌『ニュー・サイエンティスト』(New Scientist)による「Mirror test shows magpies aren't so bird-brained」という1分弱の動画です(タイトルを訳せば「カササギは鳥頭ではない」とでもなるかと…)。実験者によって首につけられた黄色いシールを、カササギが鏡のなかに見て、しきりに気にする様子がわかります。


Mirror test shows magpies aren't so bird-brained ...

『意識をめぐる冒険』

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●『意識をめぐる冒険』のための地図 [002]
『意識をめぐる冒険』(岩波書店2014)(以下『冒険』)の著者クリストフ・コッホさんには別の邦訳書があります。『意識の探求―神経科学からのアプローチ』(以下『探求』)という上下巻の本で2006年に出ました。こちらはどちらかというと、大学・大学院で脳科学を学ぶような人を対象としたやや専門的な内容です。うってかわって、今回の『冒険』は一般向けの本です。一人の研究者としての自伝的な記述もあちこちにあります。『冒険』を読んで意識の神経科学についてもっと基本的なことを知りたいと思った人は、『探求』を手にとってみられることをお勧めします。