稲村堂作業日誌

科学雑誌を読む日々。

『意識をめぐる冒険』のための地図 [008]

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●『意識をめぐる冒険』のための地図 [008]
『意識をめぐる冒険』(岩波書店2014)の第5章には、以下の文章が出てきます:
フリードの指導の下、私の研究室のメンバーであるロドリゴ・キアン=クイロガ、ガブリエル・クレイマン、リラ・レディの三人は、非常に特異的な反応を示すニューロンを、脳の側頭葉内側部のニューロンのジャングルのなかに見つけた。〉(p.126)
 そして研究グループが明らかにした「概念ニューロン」についての報告が続きます。ちなみにこのあたりのことは、『日経サイエンス』 2013年5月号にも、「記憶の引き出し 「コンセプト細胞」」として詳しく掲載されています(コンセプト細胞=概念ニューロン、です)。http://www.nikkei-science.com/201305_068.html
 「概念ニューロン」と言われると、なんだか1個の細胞の姿が思い浮かぶかもしれないけど、本文中にもある通り、任意のひとつの概念に対応する数千個の細胞(ニューロン)の集団が「概念ニューロン」であると考えるといいようです。特別な機能をもつニューロンと言えば、ほかに「ミラーニューロン」があります。『意識をめぐる冒険』でも第6章でちょこっとだけ触れられてます(p.165)。このニューロンの場合も、別に1個の細胞のことを言っているのではなく、細胞集団の働きのことを言っているのだと思います。

『意識をめぐる冒険』のための地図 [007]

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●『意識をめぐる冒険』のための地図 [007]
【中学生・高校生のみなさんへのブックガイド】
『意識をめぐる冒険』(岩波書店2014)の第2章では、著者である意識研究者クリストフ・コッホ氏の少年時代から研究者になるまでのプライベートな事実が述べられています。序文に書かれた、〈この本は一般的な科学書とは言えない。告白の書でもあり、自叙伝でもある。〉というのはそういう意味です。
 科学者がいかにして科学者となったか? という話はなかなか興味深いところがあります。今回紹介したいのは、『キュリアス・マインド』(幻冬舎2008)という本です。副題に「ぼくらが科学者になったわけ」とあるように、さまざまな分野の27人の現役の科学者が、それぞれの子ども時代から研究者になるまでの経緯をつづっています。書名の『キュリアス・マインド』(Curious Minds)は「好奇心の強い人たち」というような意味になるでしょうか。偶然というか、『意識をめぐる冒険』で言及された何人かもこの本で紹介されています。チクセントミハイ(p.041)、カーツワイル(p.193)、デネット(p.251)といった人たちです。興味があったら読んでみるといいと思います。

科学雑誌を読む

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一昨日、外から帰ってくると、ポストに別冊日経サイエンス系外惑星と銀河』が入っていた。「系外惑星」は「太陽系外惑星」の略。英語では、extrasolar planet。系外惑星への関心というのは、たぶんそこには生命体がいるんじゃないの? というところにあるのだろう(確かにいそうだ)。
 「ETの信号をつかんだら」という記事(p.052)をさっそく読んでみる。「地球外知的生命体探査」という国際プロジェクトがあってSETIと略されていることを知る。このアルファベットの真ん中に"ET"が入ってる(ET=地球外知的生命体)。
 具体的には、ET(どうし?)がやりとりしている(であろう)電波を、地球上の電波望遠鏡を使って横からキャッチしてやろうという計画らしい。電波を使って情報をやりとりしているほどの生命体なら「知的」だろうということか? で、結論から言ってしまうと、今のところETが発しているらしき信号をキャッチはできてないとのこと。
 ちなみにこの記事はサイエンスライターの人が書いているようで、過去の信号キャッチの誤認騒動の顛末とか、「ETの発する信号をキャッチするのではなくむしろ地球から積極的に信号を外に向けて送る計画の是非」などにも触れられてます。
 記事を読んでいて、どういう観測結果をもって、"宇宙人の会話"の証拠とするのか?ということに興味がわく。こんな記述があります。〈メッセージの内容は,パルスの周波数や振幅の変化で表現されている可能性が高い〉。考えてみると、「コミュニケーション」という概念についての理解は、地球上の(しかも)ヒトどうしのあいだでのやりとりで得られた知見が元になっているわけですよね。"宇宙人"が今の人類には想像もつかない「情報のやりとりのしかた」を採用している可能性はあるよなあと。たとえば人間とヒト以外の動物(イルカとか?)とのコミュニケーションについての研究とか役立つんじゃないかな~などと夢想する。

『意識をめぐる冒険』のための地図 [006]

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  ●『意識をめぐる冒険』のための地図 [006]

『意識をめぐる冒険』(岩波書店2014)の第3章には、以下のような記述があります:
意識状態は、朝の目覚めと同時に始まり、眠りに落ちるまで続く。眠っているときも、夢を見ているあいだは意識があるが、深い眠りのあいだや麻酔中や昏睡中には意識はなくなる。〉(p.066)
 夢を見ているときの意識って、起きてるときの意識と同じものって言っていいのかなー? と以前から考えていたりする。意識にもいくつかのバージョンがあるんじゃないかなーと。あ、いや、まったくの素人考えです。でも意識をサブグループに分けるという試みはどこかでなされているような気がしないでもない。ちょっと調べてみよう。